とあるジャズ喫茶

稲毛駅前の住宅街にある、一見、それとは気づかないような建物の、二重になった扉を開けると、そこは音のワンダーランドだった。
垂涎の最高級機エベレスト66000が発する音が、信じられないようなリアルさを持って迫ってくる。一音一音の輪郭がくっきりと、ダンゴにならずに聴こえてくるのは、機器だけでなく、音響にも細心の注意を払っているからであろう。


そろそろ家のオーディオ買い換えようかとおもっていたのだが、僕が自由に使えるお金で購入し、小さなマンションで廻りを気にしながら聴く音楽など、ここの音に比べたらラジカセと変わりなく、いっぺんにオーディオ熱が冷めてしまった。


それくらい、異質の音世界がここにはあるのだな。


ジャズ喫茶ということで、若干構えて入店したのだが、店主とお客さんが普通に雑談している、割とフランクな雰囲気だったので、僕もリラックスして音楽を楽しむ。選曲も面白くて、ベイシーの後に、聴いたことがないフリージャズが流れたかと思ったら、エロルガーナーやクルセダースまで登場するという、こだわりのなさ。

このヌルい感じが、また、良いと思う。

ビール小瓶が1,400円というのは高いようでもあるが、絶対に手が届かない最高のシステムでアルバムを何枚もきけるのだから、決して高いものではない。

だつて、週に二回ずつ、10年間通い続けても、ここのスピーカー片方も買えないのだ!


いやはや、何でもっと早くこの店訪ねなかったんだろうなんて後悔しながらも、久々に胸がときめく素晴らしい出会いであった。