リトル・ウィリーズ

 ノラジョーンズを聴いて思うのはその育ちの良さと屈託のなさである。
 彼女が様々なジャンルの音楽に囲まれて育って来たのであろうことは彼女の音楽の懐の深さから容易に想像できるし、カントリーからの影響を受けていることも明白なのだが、まさか”ウィリー・ネルソン”チルドレンだとは思わなかった。ただ、ウィリー・ネルソンはカントリーのメインストリーマーでもありアウトローでもあり、また、スタンダードを彼なりの解釈で取り上げ、深く渋い、何ともいえない味わいを持ったアルバムも残している。ドリー・パートンと競演してしまう位だから、ノラが王道であり挑戦者でもあるウィリーが好きだというのは少し考えれば分かるのだが、最初は意表を突かれたと素直に告白しておこう。
 懐かしいスターダストは後でゆっくりと楽しむこととして、まずThe Little Williies。凄くリラックスしていて楽しいアルバムだ。自分達のルーツをカミングアウトするようなアルバムは大概ガチガチに緊張してこわばっていて過剰に自分の過去を強調するようなものが多いのだが、このアルバムではルーツであるカントリーの泥を丁寧に拭って表土を薄く剥いで磨きこみアクをきれいに落とした洗練された音楽に仕上げている。ジャズやブルースの味わいも巧く溶け込んでいるので、どこから切り取っても楽しく興味深い味わいを持っている。実験的な試みをしてあるのにアッケカランとしていて音楽をリラックスして楽しんでいるように感じられる。ちょっとイッチャッてるルー・リードのもつ雰囲気なんてなんて最高じゃないか。極上の1枚だ。