レナードの朝

 恥かしい話だが最近ちょっと泣き虫になってしまったようだ。
 映画を観ていて涙が止まらなくなることがあるのだ。もちろん今日だけは最初から覚悟していたのだけど、やはり途中から涙腺が緩むのを抑えることが出来なかった。
 「レナードの朝」どんなに映像技術が発達してもこの映画をリメイクすることは出来まい。デニーロとロビン・ウィリアムスだけが築き上げることが出来る、逞しくも美しい生きる意志と過剰なまでに優しい魂が織り成す物語なのだ。
 脳炎で社会との扉を閉ざされたデニーロが、ある薬剤のひと時の効果でその扉を再び開いて戻ってくる。失われた数十年を恨み慈しみ、そして、戻ってきた時間を大切に抱きしめ感じる。しかし、すぐに襲ってくるあまりにも冷酷で残酷な現実。体が自由を失っていくのをはっきり自覚しながら無力な抵抗を続ける。無言の叫び、明日の我々のためにと極限の中で見せる人間としての誇り。もし彼の立場だったら、それでも生き続けることを選べるだろうか・・・。デニーロの演技とは思えない姿を突きつけられて僕は悩み苦しみ、畏れる。
 毎日こんな映画ばかり観ていたら僕が壊れてしまう。だけど、時には真摯に生と死という根源的な問題に正面から対峙して澱んだ心をリセットする作業も必要なのかもしれない。
 ただ、素晴らしい映画だというだけで他に言葉が見当たらない。