グラミー賞

 デビュー10年を超え先日もZEPPで最高のパファーマンスを見せてくれたFOBのパトリックはグラミー授賞式に出席したときのことをこう語っている。「スティービーワンダーとアリシアキーズのアカペラデュエットを鑑賞しながら、あの革新者たちで溢れる空間の中で、俺などポピュラーミュージックに何の貢献もしていないのだと思った」
それなりに名が通ったスターですら圧倒されるような、これでもかってくらい贅沢なメンバーがぞろいする音楽祭での、普段では考えられない豪華でサプライジングな年に一度のグラミーアワードは何にも代えがたい楽しみである。


 56回にある今年のグラミーではポールとリンゴの再会が一番の話題になっていたのだが、ビートルズには何の思い入れもない僕は、相も変わらぬ目立ちたがりやのヨーコオノまで、丁寧に引っ張り出さなくてもよいのにな何てことを考えていた。でも、久々に聞いた、上手くないけど絶対に出しゃばらないリンゴのドラミングは、それはそれで悪くはない。ポールとリンゴの再開を切り口に「奇跡のコラボ」を、今回のグラミーライブのコンセプトにしていたと思うのだが、中でも、ランランという中国人ピアニストとメタリカのコラボは刺激的かつ圧倒的。グラミー流演出の大成功例だと思う。


 また、ポピュラーミュージックは世代を超えて繋がっているのだなっ、てことを強く感じるさせられた。
 例えばウィリーネルソンやマールハガード、クリス・クリストファーソンを前に、テイラースイフトは何を思いながらピアノを弾き語ったのだろう。ポップパンクの顔役であるBJアームストロングはなぜ、フィル・エヴァリー・トリビュートで歌うことを引き受けたのだろう・・・なんて。
 今回のグラミー最大の見せどころともいえる、ナイルのフリークアウトとスティービーのスーパースターが絶妙に融合しっちゃったダフトパンクのゲットラッキーは感涙ものだった。伊達男のナイル・ロジャースのカッテングギターはいつ聞いても最高に格好いいし、スティービー節の説得力には誰もかなわない。
 個人的にはリンジーバッキンガムの登場が最大のサプライズで、あのギター!あのギターフレーズが聞こえてきた瞬間に目頭が熱くなってしまった。バックボーカリストとしても流石の一言で、もう一度Sニックスとの絡みが聴いてみたいな・・・なんて事を思ったり。それにしても、NIN+クイーンズ・オブ・ストーン・エイジWITHデイブ・グローブ&リンジーという渋すぎる本物のロックをオオトリに持ってくるなんて、さすが、グラミーやることは小粋で素晴らしい。