真実の行方

 96年に公開されたリチャード・ギアの主演映画だけど、僕はあのニヤケ顔が好きじゃない。この映画のお楽しみはエドワードノートンで、心に深い傷を負った臆病で誠実な青年としての顔と、凶暴卑劣なチンピラとしての顔を持つ多重人格的殺人容疑者役を完璧に演じきっている。彼の演技力で映画が展開していくような、そんな風に感じた。ストーリー的には後味の悪いラストが作品の価値を高めている。


 この映画と、ファイトクラブアメリカンヒストリーXという3作でのエドワート・ノートンの演技は凄い。気の弱そうな青年とか、冴えないサラリーマン役がはまり役かと思いきや、アメリカンヒステリーXではネオナチのカリスマ的若手リーダー役演じきってしまうなど、その懐の深さに驚かされるが、華がないのが辛い。金を生むスターを演技で食ってしまうので、制作側からすると使い難い俳優だったかも。いや、ファイトクラブブラッド・ピット会心作なんだから、そんなことはないか。