イージーライダー

 この映画は大学2年の時に、新宿かどこかの単館リバイバルロードショーで見たのだけど、この映画の持つ「時代の匂い」が分からなくて、ちょっと違和感を感じたのを覚えている。いや、同時代でなくてホッとしたというか・・・。LSDでぶっ飛ぶ幻影的なシーンが強烈な印象に残っているのだが、僕がその手のものに染まらなかったのは、たぶん、時代がズレていたからだと思う。


 麻薬の密転売で小金を作ったキャプテンアメリカピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)は、ハーレーにまたがり謝肉祭が行われるニューオリンズを目指すのだが、長髪だというだけで、白い目で見られ2流モーテルでの宿泊すら断られる。自由の国アメリカへの幻滅と、理想空間コニューンへの幻想と言葉にしてはいけない絶望感。途中でアル中弁護士ジョージ(ジャック・ニコルソン)も仲間に加わるのだが、南に進むにつれ偏見は強まり、ついには夜襲リンチを受けてジョージを喪う。そして、あのラストシーン。


 途中、アル中弁護士にこんな言葉を語らせている。
「自由については幾らでもしゃべるが、自由は奴をみるのが怖いのだ。」
それは、異質な人間を、許容しないどころか、殺しさえも厭わない超保守的な南部白人の価値観って、いや、世界中で振りかざしているアメリカの正義っていったい何なんだろう?という問いかけにもなる。
 


 この映画は格好いいロードムービーであり、全編に渡り格好いい音楽が聴けるクールなミュージック・ムービーでもある。僕はピーター・フォンダよりも、デニス・ホッパーの俗っぽい仕草や言動、時に見せる無防備な表情に飾らない男を感じた。また、痛烈な保守白人層批判や思想的メッセージに麻薬幻影が入り混じる難解な映画だとも思ったけど、デニス・ホッパーって共和党支持者っていうのだから本当に訳が分からない。いずれにせよ、劇場で強烈な衝撃を受けた事は誤りなき事実で、(特に学生時代を振り返るときに)絶対に落とせない作品である。