Overcoming

 幾つか問題を抱えているのだが、それはそれとして割り切って、気になりながらもズルズルと引きずっていたOvercomingを見に行くこととした。
 前にも書いたが渋谷を歩いていて僕の同世代と擦れちがうことは極めてまれで、若さからくる独特の脂ぎった体臭や日本人であることを捨てたかのようなに奇抜な化粧に毒気を抜かれ、It's not my positionだぜなどととブツブツ言いながら映画館を探す。日本ではマイナーなツール絡みの映画が上映されるようなところだから、微妙にジミで分かりにくいところに劇場があり、ようやくたどり着いたころには開演から30分近くたっていた。
 2004年ツールに臨むチームCSCを淡々と追いかけたドキュメンタリーなのだが、世界三大イベントに望むという割には暗くて重苦しい空気が漂っている。その背後には前年の100周年記念大会に爽やかな風を吹き込んだ、僕も彼の姿には感動したし何回か彼のホームページも訪ねてその人柄に惹かれていた、T・ハミルトンのドーピング問題があったと思うし、大会前にはバッソは絶対的なエースではなく、2枚看板として臨むサストレの扱いにデリケートになっていたこともあろう。相次ぐ落車やバルトリの引退問題も重なってくるし、バッソのステージレース勝利の背景には母親の癌告知問題が・・・。
 ツールの最終結果が示したようにバッソがランスの後継者であることを高らかに宣言する映画であればトーンは全く違ったんだろうけど、まだレース前にはそこまでの期待をかけることはできなかったようだ。とにかく、一人で見ている分には好いと思うし気の合う仲間と行けば居酒屋での話題に事欠かないと思うけど、自転車を知らない奴はちょっと連れて行けないな。
 そういえば、僕の後輪は真っ赤なCSC・limitedだ。バッソは下りが苦手だし昨日の落車はタイヤに問題があるのかもしれない、なんて一瞬考えてしまう。プロは90キロ台で下りのコーナーを突っ込んでいくし、そんなギリギリで過酷な状況下での生きたデータの集積を持ってビットリアは信頼を勝ち得ているのだから、僕などにタイヤが悪いなどといわれても、まぁまぁとにかく一生懸命練習してくださいと軽い軽蔑の笑みをもって返すだけのことであろう。
 落車の影響でしばらく泳ぎにいけないのが痛いが、今日は帰ってローラー台で軽く40分ほど体を動かす。落車の翌日にアルプスに臨むような人たちの姿を見せ付けられたら、こんなかすり傷で練習を休むわけには行かないじゃないですか。