手賀沼トライアスロン

 手賀沼大橋が見物者で埋まっている。
 トライアスロンという馴染みの薄い競技への関心も少しはあるかもしれないが、多くの人たちの関心事は、本当に手賀沼で泳げるのだろうか?ということに尽きるのだろう。僕も手賀沼のほとりで育ったから分かるのだが、どんなに汚れて異臭を放っても、ワースト湖沼という称号を不動のものにしても、地域のみんなは手賀沼が大好きでその再生を心から祈っているのだ。
 想像通り透明度は限りなくゼロに近いが異臭はない。
 ヘドロのような堆積物が溜まった沼底に足を着くと、そのまま沼に引きずりこまれるのではないか、と不安になる。それでも、あれだけ揶揄されていた手賀沼に、今こうして浸かっているのだと思うと深く感じるものがある。きっととんでもない苦労があったと思うのだが、開催に向けて骨を折ってくださった関係者の方々に深く感謝するばかりである。
 ボンヤリと感傷に漬かっている間に時間が進み、8時ちょうどにスタートの合図がなる。淡々とリズムを守って泳ごうと思うのだが、この透明度では激しいバトルに巻き込まれるのは仕方がない。スタート地点の桟橋から沖に向かって200m進み、そこから西に進路を取って750m泳ぐと折り返し点になるのだが、中間点手前でバトルの弾みに沼水を思いっきり飲み込んでしまう。腹を壊して出張に出れなくなるのではとか、体内でアオコが繁殖したらどうしよう?などとネガティブな思考に覆われるが、右腕が疲労で重くなってくると目先のスイム完泳しか考えられなくなる。
 最後は平泳ぎの選手にも大きく水をあけられ、10分後にスタートした選手の何人かにも抜かれて何とかスイム終了。相変わらずのタイムだったようだ。
 きれいに舗装された道幅もタップリとってある自転車道は快適なのだが、思いのほかスピードがあがらない。スイムからバイクへの移行に体が反応できないでいるのでは?と不安になるが、実際は軽いアゲインストに圧されていたようだ。手賀沼大橋から東に5kmほど走って折り返す4周回コースなのだが、復路は快適!の一言で、フォローに乗って時折スピードは40kmを超える。
 しかし、調子に乗りすぎてランに残すべき足を使ってしまったようだ。
 今回のテーマはランでの快走だったのだが、とんでもない。腹痛がキツくてペースが
あがらない。最初は手賀沼の水にやられたのかと思ったがそんなばかなことはない。腹筋が悲鳴を上げているだけなのだ。
 どうもバイクのコースは規定より短いようで、ここでのタイムなど何の意味もないことは分かっているのだが、それでも目標はサブ2:30と決めていたので、何とかこのハードルだけは越えようと思って走るのだが、ジワジワとペースが落ちてくるのだ、アセリが先に来て冷静な計算が出来ない。
 給水所では水をぶっ掛けてもらい、和太鼓の響きや観客の声にも後押しされて、ようやくフィニッシュ地点へと進み、何人かのギャラリーとハイタッチを交わしてゴール。手賀沼を泳いでの大会フィニッシュということが何よりも嬉しい。

 この手賀沼トライアスロンは初心者にもよく気を使ったフレンドリーな大会で、本当に気持ちよく競技を楽しむことが出来た。大会開催に努力していただいた関係者の方々には心から深くお礼を言いたいと思う。
 でも、来年また出場するかどうかといわれれば・・・手賀沼の水質しだいかな。
 ただ、堂本知事をはじめとして関連地域自治体は、この大会を手賀沼再生のシンボルとして位置づけているようなので、いっそうの水質改善に期待したいと思うものであります。