ダンス・ダンス・ダンス

 手賀沼トライアスロンのあと、ちょっと辛くて長い出張に出ていたので自転車を乗るのは2週間ぶりになる。
 これまで手賀トラをピークにすべく練習を続けてきたので、大会が’不完全燃焼ではあるが’終わってしまうと、どうにも気が抜けてしまい今ひとつ気持ちが盛り上がってこない。 案の定GIROのO2錬でもクリテに入る前に先頭集団が見えなくなってしまい、追走に出た店長にもついていけず、結局TT状態で周回を重ねることになった。しかし、そこで思ったのだが、中途半端に他人のケツにつくよりも独走のほうがいい練習になるのではないだろうか。ズルズル離されてもあきらめずにペダルを踏み続ける忍耐力も必要だし。
 今回の出張では往路の飛行機で、村上春樹ダンス・ダンス・ダンスをちょうど20年ぶりに読み返して見た。そこで80年代に流行った音楽をさんざん腐しているのだが、流石の村上春樹マイケル・ジャクソンだけは持て余しているようだ。当たり前だ。ただでさえケタが違うマイケルの才能をQジョーンズがピカピカに磨き上げたのだから。もちろんステーヴィーワンダーやプリンスも凄いが、マイケルは凄いだけじゃなくて最高に恰好いい。
 そんなこともあって、練習を終えてから95年に発売されたマイケルのヒストリーをかけてみた。BILLIE JEANが掛かればMOON WALKが、THRILLERを聞けばジョンランディスの”あの”映像が当時の時代の思い出とともに鮮明に浮かび上がってくる。BEAT ITでのエディ・ヴァン・ヘイレンのギターも最高だ。あるいはBEATLESの名曲をカバーした、セクシーにグルーブするCome Togetherを聞けば、彼の才能がどれだけ突き抜けているかがよく分かる。
 やはり、村上春樹にはボーイジョージがお似合いだ。
 話を戻すが、初めてダンス・ダンス・ダンスを読んだときの僕はちょうど20代の折り返し点を回った所だった。春樹の青春三部作を完結させるために空いた隙間を埋める、ちょっと知的で空想的な冒険はとても刺激的に感じられたものだ。読み返してみると、ユキへの入れ込みが激し過ぎたためか、途中でバランスが崩れ後半は相当強引に話を展開させているように感じられる。バタバタと人が死んでいくのも相変わらずだ、いや、むしろこの点に関しては開き直っているようにも思えるのだが・・・。それでも、僕のようなちょっとハスに構えた中年を、彼だけが持つ独特の空間に再度引き込んでしまうのだから、そのパワーは凄いといわざるを得ない。おかげで7時間のフライトが全然苦にならなかったから実際のところ感謝しているのである。