ちょっと贅沢な食生活を楽しむ

 ちょっと辛かったけど、バックパッカー達が涎をたらして羨ましがるような出張であった。
 出発前は楽な出張だと舐めていたのでGIRO錬に参加してから成田空港へ。広州で飛行機を乗り継ぎ南寧空港に着いたのは現地時間で10時前だったのだが、そこからベトナム国境も近い防城に着いたのは日本時間では午前1時過ぎである。疲れて食事をとる気にもならず、部屋に入るとそのまま熱いシャワーを浴びて、バスタブがないのだから湯船に浸かれないのは仕方がない、生地がケバケバしてやたら皮膚を刺激するベットに潜り込んだ。
 翌日からのスケジュールは淡々とこなしていたのだが、日本にいたらめったに食べれないような、ちょっと刺激的な刺激的な食事が続いて最後には腹の調子を崩す羽目になってしまったのである。
 まず、月曜昼に食ったのがウサギとスッポンに犬肉!その犬肉からよく言われる獣臭を感じることはなかった。ニンニクと生姜それに夥しい量の唐辛子と一緒に炒められているのだから当たり前だ。兎に角辛いのだが肉質は思いのほか柔らかく、言われなければ牛か豚のどちらかだと思って食っていたに違いない。(何の肉だか分からない位強烈に辛かったのだ)そういえば先般読んだ開高健の美食本はベトナムで鼠を食した話で始まっていて、さすが掴みが強烈だと感心したものだ。鼠に比べれば犬なんて・・・でもこの習慣は北京オリンピック後まで続くのだろうか?ちょっと気になるところである。
 夕刻に貴州省に移動、夜飯では例の如く白酒の乾杯が延々と続くことなるのだが、中国人の先生方は封を開ける前の白酒のチェックに余念がない。どうも変だと思って聞いてみると、最近偽ブランドにメチルアルコールが混入していて数百人が失明するという大事件があったのだという。有名な貴州芧台酒を飲んだのだが、おそらく市場に出回っているこの商品の半分近くは偽者だろうとの話で、この辺の商魂逞しさは流石中国という感じなのだが、流石に酒飲んで失明なんかしたくないので、周りの様子を伺いながらの一気飲みとなった。
 いい酒は翌日に残らないという話は中国人も盛んにするところで、翌朝、どうだ二日酔いしないだろう、俺が選んだ酒は本物だったのだ、などと自慢話を聞かされながら貴陽から100km以上離れた田舎へ車を走らす。決して清潔とは言いがたい小さな店で昼食を食べたのだが、その辛さの強烈なこと!ぶつ切りにした鶏を丸ごと一匹ぶっこんだ鍋料理なのだが、汁が唐辛子で赤いというよりどす黒くなっている。一口食べてはビールを飲み、ビールを飲んでは一口掴みということを繰り返しているうちに、鍋が煮詰まってきてその場に入るだけで涙が出てくるような辛さだ。
 辛いけど、旨くて箸をとめられないよ・・・お世辞のつもりでそういうと、今日はお前がいるから特別に辛さを抑えているんだ!との返答あり唖然。
 この日本人向けにアレンジされた?唐辛子鍋で完全に腹が動転してしまったので、慌ててキャベツーと正露丸を流し込んだのだが調子は戻らず今に至っている。昨夜食べた雲南省名物のキノコ鍋など本当はもっと楽しめたはずだし、今日もトランジットの時間を利用して広州の街中を歩こうと思っていたのだが空港でじっとしているよりなかった。好奇心もいいが、体調を担保にするようなチャレンジは避けなければならない、という実に初歩的なことを再確認させられた今回の出張であった。