wood stock

 自由とか解放区とかいった言葉に熱くなる時代はとっくに過ぎてしまい、ドラッグだフリーセックスだといわれても、大変だなって感じで流し飛ばしてしまう。僕はただ音楽を楽しみたいだけなのである。
 ジョー・コッカーといえばジョン・ベルーシの物まねを直ぐに想像してしまうので、若くてお腹が出ていない姿には違和感を感じたりもするのだが、この声はいつ何時聴いても痺れてしまう。The Director's Cut!最大の特典ともいえるジャニス・ジョップリンの荒涼としてどこか危ういボーカルが、映像と通すことで、より切なく胸に響いてくる。そして、その暴力的で破壊的なフレーズにアナーキズムすらを感じさせるジミ・ヘンドリックス。そのギターは時に卑猥に響き時には背筋に感じるほど官能的で、どこか危ない世界へ引きずりこまれてしまうようだ。
 なぜ突然wood stockなのかといえば、短絡的で想像力のかけらもないのだが、カリマンタンで視界が5mもないような正に破壊的なHazeの中に置かれて行程変更を余儀なくされたときに口ずさんでいたのがPurple Hazeだった、というだけのことである。それにしてもこの映像で目にすることができるパフォーマンスはどこを切り取っても凄い。愛やらコミューンやら何やらを語ったインタビューが飛ばせども飛ばせども延々と続くのには閉口してしまうが、この愛や理想に飢えた青い感情が昇華して生まれた奇跡なのだといわれたら、これはもうも頷くよりない。
 お腹が出て頭が薄くなったおじさんたちの郷愁が復活させた嬬恋・・・悲しいね。