スリラー

 その昔、明るく清潔で健康的な雰囲気を売りにしたカフェ・バーというものが流行った時代があって、僕も終電がなくなって朝まで時間をつぶすときなどに利用していたのだが、その多くでMTVをガンガンかけていた。
 そこで必ずといっていいほど目にしていたのがスリラーからのヒット曲の数々で、当時のビデオクリップの中でマイケル・ジャクソンだけが全く違う地平に立っていた。もちろん金の掛け方も違っていたはずだが、彼がそこにいなければ、それらの作品は何の輝きも放たなかったはずだ。もちろん映像だけでなくQ・ジョーンズが指揮した楽曲も抜群の出来を示しており、僕のような斜に構えた人間もマイケルの凄さだけは認めないわけにはいかなかった。
 Off The Wallも素晴らしいデキで、彼は既に特別なスターの座についていたのだが、スリラーの成功は桁違いで、当時僕が通っていた大学のキャンパスですら、昼休みには何組ものグループがラジカセをガンガンかけて、スリラーのダンスシーンにトライしていた。多くは盆踊りのような出来栄えでとても見れたものじゃなかったが、それでも、M・ジャクソンのように踊りたいというのは、僕も含め、彼のショートフィルムを見た全ての若者達が持つ共通の願望だったのだ。
 今マイケルのショートフィルムを見直してみて、時々ため息なんかついたりしながら、やっぱり特別な存在だと、しみじみ感じているのだが、今の10代の若者なんかが見たらどう思うのだろう。どうあろうと僕には全く関係ないのだが、マイケルの魅力は時代を超えた普遍的な輝きを持っているのだろうか。

 さて今日は自転車を30kmほどこいだ後にダラダラとランを5km。明日は成田ポップランだというのに何の緊張感もなく、モートンカデという、いかにも平均値的なカジュアルワインをカパカパ飲んだりしている。今の状態で出たら、それこそコテンパンにやられるはずなのにいいのだろうか。