酒の細道

 なんか予感がしたので本屋を覗いてみたら、やっぱり出てました。”酒の細道”20巻。
 この漫画は今やコンビニや駅のキオスクで見かけるくらいの人気シリーズになってしまい、何だか僕の手から離れていくようでちょっと寂しい感じもするのだが、単行本を開いてしまえば、いつもと変わらない、ほのぼのと面白可笑しい呑み助の世界が描かれていて思わずニヤリとさせられる。
 その昔ラズウェル細木さんはジャズ批評かなんかで、凄いマニアックなジャズ漫画を書いていて、単行本が出ることになったときには小躍りして本屋で予約したものだった。僕の当時のテリトリーであった柏”ディスクウニオン”までレコードを漁りに遠征してくる話などがあって、お主やるな・・・と唸ったりしたものだ。
 ジャズ評論家とかジャズ喫茶のオヤジ、或いは普通のジャズファンの中にも、俺はジャズが分かるんだ、どうだ偉いだろう!って感じの、傲慢で閉鎖的な人間がたくさんいて、ジャズというのはどうも近づきにくいものであった。ちょっと勇気をだしてその世界に踏み入ると今度は、正当なジャズというのは・・・・などと説教臭く語りたがる輩がたくさんいて、兎に角閉口してしまうのだが(もしかすると僕もその中の一人かもしれないので反省)、ラズエルさんは全く違っていて、ちょっと入手が難しい、とあるレコードが欲しくなった瞬間に舞い上がってしまい周囲の状況が全く見えなくなってしまうような、マニアックな人間のもつ滑稽で悲しい性を優しい気持ちで描いていて、とても共感できるものだった。
 その後男の子育て日記みたいな漫画も書いていたが、常に”楽しむ”側の人間であれというスタンスは全くブレることなく、酒細20まで続いていて、本当に嬉しくなってしまう。一度ラズエルさんとお酒を飲んでみたいものだなぁ、なんて思ってしまうのである。