NORAH JONES / NOT TOO LATE

 子どもがプリキュアという幼女向けアニメに夢中になっているよこで、音楽を聴いている。Aテクニカのヘッドフォーンから流れてくるのはTOM WAITSRAIN DOGS
キッチンでは嫁さんが洗物をしている。混じわることのない世界。
 彼が描く世界というのはいつも紫煙に曇っっていて、その先に浮かんで来る物は、港町の如何わしい飲み屋であったり、薄汚れたコートの襟を立てて酒を煽る世間から見放された男達だったりする。
 実に残念なことなのだが、僕にはTOM WAITSの潰れてしわがれた、でも味わい深い彼のヴォーカルが英語で何を言っているのか全くキャッチできないので、彼が作っている世界を詩で味わうことが出来ない。ただ自分のあまりにPOORな空想世界で泳がせてみるだけである。
 僕にとってTOM WAITSというのは、どちらかと言うとシンガーというより、ジャームッシュ映画での怪演のほうが印象が強くて、まずパッと浮かんでくるのは、コーヒー&シガレットでの、あのIGGY POPとの奇妙な掛け合いだったりする。もちろん暗く澱んだ歌世界は魅力なのだが、繰り返し楽しむような種類のものではない。

 なぜ、いきなり朝っぱらからTOM WAITSなどを聴き始めたのこといえば、昨夜ノラジョーンズの新譜の2曲目、SINKINを聴いたときに、この隠微な世界は何なんだろうって戸惑い悩んで、そうかこれってモロTOM WAITSの世界じゃんという結論に到達。それを確かめるために彼のアルバムを取り出したのである。
 このSINKINにはちょっと意表を突かれたけど、NOT TOO LATEはやはりノラジョーンズのヴォーカルの魅力を前面に打ち出した予想通りのアルバムで、心地よく彼女の世界にドップリと浸かりながら全編を楽しむことができた。バックは控えめであるほどよいし、過剰なアレンジなどは一切いらない。きっとノラはどこへも行かない。10年後もきっと同じようにアコーステックで心地よいスモーキーな世界を描き出しているに違いない。