バベル

 言葉が、気持ちが伝わらないもどかしさ苛立ち、猜疑感。モロッコ、メキシコ、日本を一つの糸に繋げ、微妙に震えながらも小気味よいテンポで話は展開していく。
 菊池凛子の突飛な行動を拒絶し追い出した歯医者、どう対応すべきか混乱し、戸惑う警部、焼酎を煽りながら読んだ手紙には何と書いてあったのだろうか?
 Discommunicationと家族。
 何の衒いもなく動けない妻の下の世話をブラピ、両手を挙げて投降し犯人は自分だからお兄さんを助けてくれといって訴えかける羊飼いの弟、撃たれた子どもを抱き、揺すり号泣する父親、そして、裸のままベランダで立ち尽くす菊池凛子とそっと手を繋ぐ役所広司。そのラストシーンはさりげないようで、白々しようにも感じるが、示唆的で、かつ、感動的でもある。

 それにしてもブラピも歳を取ったもんだな。僕の同世代としては世界で最も恰好いい男の一人である彼ですら、老け込んでいくのを隠せないのだから、僕がボロボロになっていくのも当然だ。

 菊池凛子は確かに助演女優賞候補に相応しい演技をしていると思うけど、それは彼女の資質というよりも監督の力に負うところが大きいのではないか。ハリウッド女優だなどといって自惚れ浮かれていると、ただの一発やとして終わってしまうような気がする。