トライ360

 世の中にはオバカな企画が色々あるが、これなんかは最上級の部類に入るのではないか。千葉から新潟・直江津までの360kmを一日で、しかも自転車で!走ってしまおうなんて・・・。時速30kmで走り続けても12時間かかるわけだが、途中で臼井峠が待ち構えていることも忘れてはいけない。
 あなたは、こんなイベントにトライしたいと思います?
 出発は深夜02:00。こんな夜中にピチピチのサイクリング・ウェアに身を包んだ輩が40人近く集まっているっていうだけでマトモではない。ボクもその中の一人であるわけだが、一体どうなってしまうのだろう?
 まずはウォーミングアップ代わりに淡々と自転車を漕いで東京を超える。深夜の都内は交通量も少なく、違法駐車も少ないので快適。これなら会社までのジテ通してもいいかななんて思いながら走っていたが、錦糸町までで1.5時間掛かってはチョット辛い。

 高崎手前の新町を9時頃通過。この地点で100km近く走っているはずだが、まだまだ序盤戦といった感じで、皆余裕の笑顔を見せしゃべりながら走っている。このへんから川では鮎釣りに興じる人たちがポツポツと目に付くようになる。そろそろ平坦な走りにダレてきたので、川に浸かっている人たちが羨ましく、川沿いや橋越えでは、ついつい釣り人を探してしまう。

 高崎をこえ安中に入ったあたりから微妙な登りが始まる。キツイというほどじゃないけど、こういうところでジワジワと体力を奪われていくのだろうか。
 集団はすこしバラケ気味になりながらも碓氷峠は横川の釜飯屋前に到着。ここで少し年配の方が膝外側の痛みがひどくてこれ以上走れないとのことでギブアップ。残念そうだったけど、自転車に乗り始めて3−4ヶ月でここ(峠の釜飯)まで来ちゃったってだけで凄いことだと思う。お疲れ様でした。
 相当暑くなってきたので、休憩のたびに冷たい水を被って体を冷やす。普段だったら、自販機で買ったミネラルウォーターを体にかけてるなんてことを考えたりしないけど、今日だけは特別、まだまだ道半ばにも至っていないのである。

 コンビニで休みを取って糖分を補給して、いざ峠越えに。
 これまで稲下ITCのお二人が集団を余裕で引っ張ってくれたおかげで、ボクはほとんど更足状態。せめてこの葛篭坂くらいは頑張って稲毛軍団についていこうと思い足をピクピクさせながら、もっと軽いギアがないことをうらみながらペダルを踏み続けたのであるが、R120の当りで軽井沢まであと9kmという標札をみて、殆んど卒倒。
 考えてみれば既に10時間近く走り続けているわけで、それでもこの坂道を越えようなんて、なんてマヌケなことをしているんだろう、と思った瞬間に全身が疲れの塊になってしまったのである。もっと、オバカだったことは、これは後で知ったのだが、お二人のうち一人は何と12年連続ハワイ出場という、強くて当たり前の怪物でこんな人の後ろを峠で走ろうということ自体間違っていたのである。
 結局碓氷峠のRは184位あったのだが、終盤にはいると傾斜は少しゆるくなってきたようで、足を痙攣させながらも(ホントの話です)なんとか軽井沢に到着。コンビニ休憩に入る。

 ちょっと高級なおにぎりを食べて一休み。後続をまって体を休める。
 相当体にガタが来ているようで、ごわごわになった筋肉を伸ばすため体を横にしようとした瞬間に左脹脛と右太腿と、右側の腰と肩の間の辺がいっぺんに攣ってしまい何処が痛いのかも分からない位!に全身が痙攣。
 稲毛軍団の方たちはなんでもないというふうに僕の様子をみて、体が自分のものじゃないみたいでしょう?と笑いながら、今必要なのは塩分です。練り梅かなんかを食えば一発で直ります。うち等の仲間で一つ覚えで味塩なめている芸のない奴もいますけど、まずは梅でしょうと教えてくれた。
 何んとか痙攣が治まったので、早速練り梅を買おうと立ち上がると、今度を右の側ケツが痙攣。何ともいえぬ苦しみ。
 ボクの挑戦はあえなく終わった・・・と思いながら、体を折り曲げたままコンビニにはいって練り梅を探す、が何処を探しても見当たらない。そもそも、練り梅なんて変わった商品が本当に存在するのだろうか?という疑念を抱き始めながら、乾梅を購入し一袋10粒くらいを一気食い!

 ここは強調しておきたいのですが、ホントに痙攣が止まったのです。きっとこれ科学的根拠があるはずです。

 梅のおかげ、というより本質的には稲毛軍団のADVのおかげで、ホントに元気を取り戻して軽井沢を出発。折角の休みなんだからここで一泊してテニスくらいしたいよななんて思うノーマルな思考回路も戻ってきた。

この後妙高超えというちょっとした難関はあったものの、全体的には下り基調で、いや、なんといっても強烈な引きに守られているので、メチャメチャ楽をさせてもらって直江津を目指す。
 最後?残り40kmくらいから、左膝外側に痛みが出てきて自転車を踏み込む度に鈍痛を覚えたが、右足主体のペダリングでなんとかごまかして走る。兎に角稲毛軍団の引きは強烈で、信号停止後のスタートでクリートにシューズを引っ掛けそこなうと、追いつくのが大変なのだが、ここで置いて行かれたら、道に迷うだろうし下手したらリタイアになりかねないと思って、左膝痛に耐えながら必死で後を追いかける。
 最後右膝内側にも痛み走ってきて、両足とも使えなくなったらどうやって自転車を漕いだらいいのだ?なんてマトモじゃないこと考えながら、何んとかゴール。
 到着は21:15位か。出発してから19時間以上たってのゴールである。もちろん途中でコンビに休憩はあったが、ほとんど一日中走り続けていたことになる。

 もちろん感慨はあるのだけど、一日経って振り返ってみると、どう考えても完走できたのは稲毛ITCのお二人のおかげだよな・・・。そう思うとちょっと複雑な気分になったりもするけど、まあいいか。