アリシア・キーズ

 アリシア・キースは2000年代最高の才能のひとつであると確信しているのだが、NO ONEのビデオには困ってしまった。性的魅力を強調したつもりなのだろうが、僕には欲情したオットセイにしか見えないのだ。音楽と関係のないところで変なイメージが出来上がってしまい参ったなあと思いながらの新譜。
 ”As I Am”
 あんな凄い世界を構築してしまったアリシアは何処にいけるのだろうか?自らが作り上げた巨大な壁にどうやって臨んでいくのだろうか?進む場所は何処にもないのではっ・・・ていう漠然とした思いがあり、今回のアルバムにはあまり期待していなかったのだが、この作品を聞いて鳥肌が立った。
 ほとばしるような才気走った感性に圧倒された前2作とは違い、今回は僕らが昔から慣れ親しんでいるオーソドックスなソウルサウンドをベースに駆け引きなしで、圧倒的な歌唱力で真正面から訴えかけてくるのだ。やられた・・・こんなにパワフルで表現力豊かなボーカリストだったとは。
 ジャニスmeetsフランクリンなんて不遜な言葉をアリシア自らが口にしたとは思いたくないが、このアルバムのスケールの大きさをあらわす表現としては適切なのかもしれない。
 本当、ここまで聴かせるアルバムって何十年ぶりだろう?ソウルでもないポップスでもない、アリシアだけがたどり着ける高みを同時代に共感できるってことは物凄いことだと思う。マジに。