福島トライアスロン

  残暑で悶え苦しむ姿を想像していたのだがレース直前の気温は20度を下回っている。強い雨までオマケについてきて肌寒く風邪を引きそう。
 暑さとの戦いがなくなる分だけレースは楽になるはずなのだが、どうだろう。
 スイム32分+バイク1時間5分+ラン48分=2時間25分を基準にレースを組み立て、最悪でも2時間30分を切ることを今回の目標に置いてみたが、これはバイクのコースしだいだろう。下り基調で相当スピードが出るという話だが、雨のレースでは落車が怖いので無理は出来ない。
 もう一つの目標は師匠やタツヤさんに何処まで迫れるかということ。特に今回偶然お会いしたタツヤさんは、僕が初めてトライアスロンに挑戦した03年の波崎で僕より20分以上早かったので、いつか追いつきたいなぁ思い続けている僕にとっては夢の存在なのである。

 レース前の試泳で、スイムコースの半分以上、下手すると70%近くは足が着くことが分かっていたので、レースの合図とともに慌てず騒がずゆっくりと歩き始める。ダンゴ状態のまま200m近く歩いてからスイムスタート。強烈な人口密度で2−3ストロークごとに誰かにぶつかり止まってしまうような感じ。
 何とか周りのペースに合わせて泳ぎ始めると、今後は呼吸困難に陥ったのか鋭角コーナー手前で気持ち悪くなる。このままではマズいと思い立ち止まろうとしたが足が着かない。休み休み泳いでも少しも楽にならないので、このままリタイアして陸に戻ろうかと思ったが、戻るも進むも泳ぐ距離は一緒なのでそのままレースを続けることにする。ただし、もうクロールはやめ平泳ぎと犬掻きをあわせたような惨めな形で顔を上げたまま少しずつ進む。
 暫くして心拍が落ち着いてきたところで足も着いたので、再びゆっくり歩いて進む。最下位に近いなのだろうなと思い振り向くと、まだ後ろに100人以上いそうな感じ。それどころか、折り返し点近くで2周目に向かう師匠を見つける。たぶん差は2分もない。歩く距離が長すぎて集団がバラケないので差が開かないのであろう。
 限りなくデュアスロンに近いレースだな、などと思いながらリタイアせずに2周回目に突入。プールでも最初の200m位で苦しくなることがあるので、同じような現象だと考えたのだ。それにウェットスーツな圧迫感が加わって気持ち悪くなったのであろう、と。
 もちろん無理は禁物なので歩けるところは歩き、泳ぐときもゆっくりとしたストロークを意識しながら、時折平泳ぎを交え深く息を吸い込むようにする。
 恐る恐る泳ぎ歩いて何とか陸にたどり着いたのだが、なんとスイムタイムは28分を切っている。僕のレベルだと歩いたほうが遥かに早いのだろうか?いや相当距離が短いのでは?
 一度はリタイアを真剣に考えていたのが、このタイムだと自己ベスト間違いなしということで、何か腑に落ちない、複雑な心境のままトランジッションエリアへ。
 バイクパートは想像以上の下り基調で僕のような重量級の参加者には理想的なコースである。最初の10kmには直角コーナーがいくつかあったが、その後25kmは大きなカーブもなく下り基調の道をひたすら踏み倒すだけなので、トランジッションを除く走行時の平均タイムは40kmを超えてくる。最後5kmはコーナが続いたが、無理をする理由は何もないので慎重にクリアしていってバイクを終了。1時間30分を切ってランに突入。
 スイムでは溺れかけていたのに・・・このままだと2時間20分切りは確実ということで、ますます複雑な気分。自己ベスト更新を目標に練習してきたのに、トライアスロンではタイムは余り意味がないのだなぁということを実感し、今まで何をやってたんだか・・・という虚しさを感じたのである。
 ただ、もう一つの目標は残っているので手を抜くわけには行かない。僕の予想ではバイク終了時には師匠もタツヤさんも僕より前にいるはずで、ランでどこまで迫れるかだと思っていたのだ。
 涼しいので息苦しさは感じない。また、思っていたよりは足が動くので安心したが、無理をしてつぶれてはマズいのでまずは自重ぎみに走りはじまる。
 途中周回の折り返し点の前後で前を行くランナーと交差することになったので二人との差を確認しようと気をつけながら走ったが見当たらず、折り返して直ぐに師匠を確認。抜いた記憶はないのだが僕の方が100mほど先行しているようである。残念ながらタツヤさんは見つけられなかったので、兎に角師匠には追いつかれないようにしよう、もし並ばれてもゴールまで併走できるように足を残しておこう、と思いながら走る。
 2周目の折り返し点でも師匠との差は少なくとも縮まってはいなかったので、ペースを変えないように黙々と走りそのまま師匠に先着してゴール。圧倒的な自己ベストで、かつ、大目標としていたタツヤさんにもバイクで逆転していたとのことで、嬉しいといえば嬉しいのだが、スイムがなぁ、もし途中で歩けるようなコースじゃなければ間違いなくリタイアしていただろうな、万が一バイクまで辿り着いていたとしても40km超での巡航なんて無理だっただろうな・・・と思うと複雑な気分。要は今日のレースはフロックにすぎないのである。まだまだ精進が必要である。