ニコール・キッドマン

 彼女のような完璧な美人を主演に持ってきて、その美貌を超える魅力を引き出すのは至難の業なのだろう。
 特殊メイクで顔立ちを変えてしまった、めぐり合う時間たちでのアカデミー賞受賞は、ちょっと皮肉なような気がする。この映画でメリル・ストリーブとジュリアン・ムーアとの真っ向勝負という、ヘタをすればハリウッドから抹消されてしまうようなリスキーな役柄に挑戦し、強烈な存在感を見せつけた彼女って何なんだろう。黒人差別問題や幼児虐待、ベトナムの傷といった”米国の傷”に触れた白いカラスでの演技も印象的で、一時期の彼女からは貪欲な役者魂が感じられる。
 しかし、彼女が主演を努める映画でのアプローチの保守本流は、如何に彼女の美しさを映し切るかということで、多くのファンがそれを望んでいるのだから当然だ。しかし、これがなかなか難しい。一歩間違えると奥様は魔女やステップフォードワイフのようなカラッポな映画に落ちてしまうからである。コールドマウンテンは王道の配置であるが、かえってレニーゼルウィガーの役者魂が光ってしまうのだから困ったものだ。
 ムーランルージュは彼女の息を呑むような美しさを描ききった男性ファンのための名作で、彼女の作品で意一番好きな作品を挙げろといわれれば何の躊躇も無くこの映画を選ぶが、もう直ぐ公開されるオーストラリアはどうだろう。彼女はこれから年齢と上手く付き合っていくことができるのだろうか。