チェ39歳の別れ

 エンディングとともに爽やかな風が吹くような、或いは心が暖かくなるような映画が好きだ。俗に言うハートウォーミング・ストーリーってやつだが、歳とってその傾向がますます強くなったような気がする。
 永久の愛を歌い上げたタイタニックとの対比、あるいは強いドルを標榜して金融帝国として復活していった時代とそれが崩壊した現在との時代背景を意識しながら見ればそれなりに面白いのかも知れないが、僕は生理的に受付けることが出来なかった。レボリューショナリー・ロード。
 レオ様もケイト・ウィンスレットも演技過剰で鼻につく。自分達が特別な何者でもないことに気付きながら、それを認めることができずに現実から逃避しようとし絶望する妻エイプリルには全く共感できず。救いのない結末に呆然としテロップが流れ始めた瞬間に席を立ってしまった。
 日常に埋没した人たちと現実に耐えることが出来なくなって治療を受ける人たちと、どちらが正しい感性を持っているのかといった問いかけもあり、それはそれで考えさせられるところもあるのだが、それでも、僕にはこのストーリーを許容することが出来ない。
 09年に入ってから映画が当たらない。
 チェ39歳別れの手紙はそれなりに気に入ったが手放しで賞賛するほどではない。しかし、それは僕の感性の衰えにも問題があるようだ。派手な演出に頼らないと感動出来なくなってきているのか、あるいは、現代の映像社会に慣らされた僕には彼らの行動が幼稚なゲリラごっこにしか見えないためか。もっと感じるものはあるはずなのに。
 革命の成功か死かいずれかしかないのだ。死という問題を突き詰め受け止めた人間は強く行動にブレがない。39歳で前を見据えて死を受け入れた男がいたことは忘れてはなるまい。
 僕は今年46歳になるのだが、。果して覚悟を持って毎日を送っているのか、と自問すると情けなくなってしまう。