チェンジリング

 僕はアンジーが生理的に嫌いなので、観る前には、こんな長尺物を途中で眠らずに鑑賞できるのかという不安を持っていたのだが、もろに僕の琴線に響いてきた、こんな泣ける映画を観たのは久し振りだ。
 僕たちの未来に漠然と感じていた不安や恐怖心が忽然と現実のものとして襲い掛かってきた、”今”公開されたからより強いインパクトを感じたのかもしれない。でも、あと年十年かたって老いた僕が、過去を振り返ったときに、時代とともにこの映画のことを思い出すのではないか。この映画が支えとなって頑張れたと・・・。それくらいに、アンジー演じる主人公の生き様は鮮烈で逞しく輝いて見えた。
 仕事を優先したがために子どもを失うことになった悔やんでも悔やみ切れない事実と向かい合い、当局の信じられないような弾圧的圧力にも毅然と立ち向かう姿に触れ、さらに、一分も無いない希望を追って生きる健気な姿に激しく心を揺さぶられる。そんな、彼女の強い心を目の当たりにして、何て自分の精神は甘いのだろうと僕の普段の態度・行動を恥悔い、家族のためにも、そして、自分のためにもしっかりと生きるぞと、気持ちを持ち直す。
 僕は2児の父なので、家族や子どもへの愛をテーマの映画には正直弱いのかも知れない。しかし、何か新しい力を与えてくれるような、明日も頑張ろうという気持ちを背中で押してくれるような、そんな特別な映画に僕には感じられるのである。