鈴木貴男

 錦織圭の登場でそのポジションが微妙になったが、21世紀の男子テニスを牽引してきたトップランナー鈴木貴男である。僕が通うテニスクラブの所属なので、年に1−2度津田沼のコートに現れてスペシャルレッスンを行うのだが今回は僕のクラスが当たり、光栄なことに彼の熱くて激しいレッスンを味わうことができたのである。
 調子に乗ってサインと2ショトでの記念撮影までして貰った・・・。自慢げに公開したいところがだ肖像権問題が発生すると思うので僕の思い出として、そっとしまっておこう。
 彼はビッグサーバーとして有名だが並んでみると意外なことに僕より背は低いくらいだ。それがコートに入った瞬間に一人だけ物凄く大きく見える。強力なオーラを放っているのである。
 レッスンというのは彼が壁役となってのボレーVSストロークで2分間の1本勝負。
 テニス界の熱き男といえば松岡修三であるが鈴木貴男も決して負けない熱血男だ。左右前後に激しくボールを散らしてくる。彼の球出しは信じられないくらいに絶妙で、頑張れば取れるギリギリのところにボールが来るから、こっちも必死にならざるをえない。会心のショットが返ったときの快感!そして、前後に振られながらもスマッシュを決めた時の爽快感といったら何と表現したら良いのだろう・・・。
 夢中でボールに喰らいつき快感に痺れる・・・こんな幸せな2分間は生まれて始めてだ。
 それにしても鈴木貴男の凄さを何といえばよいのだろう。例えばこんなことがあった。ボレーボレーの展開で僕が思い切り決めにいった渾身のショットを彼はオチャメな背面取りで返してきたのだ。いくら運動神経がずば抜けていても絶対にありえない神技である。こんな(本当に)考えられないプレーを目の当たりにできただけでも僕は幸せものである。
 おそらく僕の体勢やラケット面から返球位置を瞬時に判断できるのだろう。レッスンコーチとのボレー対ストロークを見ていても、コーチからの僕らでは絶対に触ることも出来ないようなボールを意図も簡単に打ち込んでエースを決めてしまうのである。運動能力もそうだが、まずは動体視力が怖ろしく優れているのではないか。
 とにもかくにも、今日は”世界”というものを肌で感じることができた、とても幸福な一日であった。