コーエン兄弟

 コーエン兄弟の映画は外せないよね、といいたいところだが、恥かしい話・・・彼らの映画を劇場で観るのはこのバーン・アフター・リーディングが初めてなのである。
 なんといっても配役が楽しい。フィットネスクラブでインストラクターをしている、ちょっとオツムが足りない筋肉バカをブラッドピッド。下半身がだらしないエロオヤジがジョージクルーニー。エロオヤジの不倫相手で、横にいるだけで疲れそうな神経過敏なインテリ女医をティルダ・スウィントン・・・。みなハマり役である。ブラピなど画面に出てくるだけで笑えてしまう。
 全身整形資金を捻出したいという思いだけで理解を超えた言動をとるフランシス・マクドーマンド狂言回し役となっているが、それに各々登場人物の勘違いや思い込みが重なりながらドタバタと話が展開していく。独特のテンポと展開に何度も意表をつかれるのでが、それがまた快感になってきたりする。コーエン兄弟の感覚に浸りきる幸せはやはり劇場で味わうべきものである。
 お恥かしい話、何本かしか見ていないが、コーエン兄弟は実に多彩な監督である。
 無情な殺し屋ハビエル・バルデムの怪演にチビってしまったノーカントリー。こいつは変なホラーよりはるかに怖ろしい・・・。あんな人間が影のように付きまとわれたら、殺される前に気が変になってしまう。予想をあっさり裏切られ続けるストーリー展開に呆然とし、エンディングにはあっけに取られる。牛の角で灯りをともすって米国の諺なのかしらん・・・
 ジョージ・クルーニーが二枚目崩れを演じたオー!ブラザーは1930年代の舞台としたロードムービー。ルーツ・ミュージックがたっぷり楽しめるので僕のようなウィリーの子ども達には堪らない名画である。ここでも予想を外されまくるのだが、ここではトボけた展開が楽しい。
 レディ・キラーズではゴスペルミュージックを堪能。トム・ハンクスに外れなしだが、マヌケな仲間達との強盗・殺人未遂劇には笑える。この映画の無難なエンディングには(彼らの映画としては)物足りなさも感じるが、たまにはラストで息が抜ける映画があっても良い。
 バーバーはいかにもカンヌの審査員が喜びそうな、しかし、僕には後味の悪い映画であった。斜に構えた主人公が胡散臭い投資話に乗って日常から脱出を図る。妻の不倫相手を匿名で脅し現金をせしめたものの、それがバレて相手から呼び出され殺されそうになる。逆にナイフで相手の動脈を切って殺してしまうのだが、殺人の罪に問われたのは、何と不倫相手の妻で、その妻は判決を前に自殺。しかも、お腹には不倫相手の子どもを宿していたというのだから堪らない。現実逃避の次なる手段としてピアノを弾く女の子に入れあげ、プロに育て上げようと試みる。しかし、レッスン講師から”いいタイプ打ちになるだろう”と突き放され、挙句の果てには、純真だと思っていた女の子から帰りの車中で慰められそうになり慌てたところで対向車と衝突。目が覚めると前の殺人事件の容疑者に戻っていたというような・・・想定外で不条理な展開が続き、最後主人公が電気椅子に座ったのを観てホッするという、狐に摘まれたような気にさせられる映画であった。
 GW期間中はコーエン兄弟のDVDを何本か借りてくる予定。思わず鼻の下が伸びてしまう僕のアイドルCZジョーンズとJクルーニーが競演したディボースショウもまだ観ていないのである。