ビッグ・リボウスキー

 コーエン兄弟の作品はほとんどの面白いが、オー!ブラザーが格別である。
 大恐慌時代のアメリカ。脱獄3人組を追いかけるロードムービー風の一作だが、ルーツミュージックの玉手箱のような音楽がたまらない。2枚目半を演じるジョージ・クルーニーが楽しそうだし、120万ドル隠してあるというJクルーニーの虚言に騙されて一緒に脱獄する競演の2人、特にティムブレークネルソンがいい味を出している。
 同種の映画にジム・ジャームッシュのダウンバイローがあるが、監督次第で味付けがこうも変わるのかと思うと興味深い。両監督ともシニカルな笑いが持ち味だが、時代の持つ大らかさもあってか牧歌的な雰囲気を醸し出しているオー!ブラザーはゆったりと安心して展開を楽しめるところがよい。(僕のアイドルだったジムジャームッシュについてはまた書く機会があるだろう)
 コーエン兄弟が作った映画の見落としがいくつもあるため、僕の感性にバシっとはまる作品を外しているのが心配で、ゴールデンウィークから彼らの映画を追いかけている。
 まず最初に片付けなきゃいけないのがディボースショー。これはコーエン兄弟のチェーンよりも我がCZジョーンズが見たいという思いから来るものだが、あの、むせ返るような色気は何時見てもたまらなく素晴らしい。
 ビビリながらコンビニ強盗をするチンピラ兄ちゃんがお似合いな、若き日の線の細いニコラスケイジが微笑ましい赤ちゃん泥棒。この作品は典型的コメディだがノーカントリーの原型を見て取れるところが興味深い。
 この2作は観てよかったと胸をなでおろし僕の好きな作品群に加えることにするが、救いのないファーゴは後味も悪くて肌に合わない。状況変化についていけず、ただうろたえるばかりの情けない気の弱くて情けない主人公が妙にリアルでそこがまた好きになれない。
 好き嫌い強弱持ちながらたどり着いた”ビッグ・リボウスキー”こいつは(僕には)面白い!文句なして好みの映画だ。複雑だが実は何もなさそうな・・・必然性のないストーリーがいい。偶然や打算が思い込みや勘違いが重なってのストーリー展開はバーンアフターリーディングに通じるものがあるが、ビッグリボウスキーのより胡散臭くてマイナーな雰囲気が僕にはたまらない。(この2作品の関係は深夜からゴールデンに進出したお笑い番組みたいなものだ)
 この映画をこうしてレヴューしていたらナゼかヴィム・ヴェンダースのハメットが観たくなった。
 そうなのだ。コーエン兄弟に見え隠れするヴィム・ヴェンダースジム・ジャームッシュの影!これは機会を改めて、もう、真剣に書くしかないだろう。