3時10分、決断のとき

 嫁さんが子どもを連れて実家に帰ってしまい寂しくもユルんだ休日。
 通勤時と同じ時間に目を覚まし、いつもと同じ電車に乗る。ただ、目的地は会社ではなくて新宿の映画館。映画を何本か梯子しようと思って家を出たのである。
 会社の始業と同じような時間に幕を開けたのが”3:10to YUMA”。脇に回る喜びを覚えたラッセル・クロウと、バットマンシリーズで敵役を完璧に光らせながら自らは沈んでいくクリスチャンベイルが西部劇などを演じて果たしてかみ合うのだろうか・・・なんて思いながらチケットを買ったのだが、期待はいい方向に、それも最高に裏切られた。涙がこみ上げて止まらない、僕の感性をモロに揺さぶる最良の作品だった。
 ラッセル・クロウの、その強烈なオーラとともに撒き散らされる男香に惹かれるのは当然だ。しかし、バットマンシリーズでは唯のお坊ちゃま俳優にしか見えない、あのクリスチャンベールがR・クロウを相手に一歩も引いていない。夫として父として、いや、一人の男として、誇りに出来る何かを求めて迷いを断ち切り、命を張って突っ走るのである。同じ思春期の子を持つ親として、家族を食わせることに汲々とした、しがない被雇用者として、ボロボロ涙を流しながら、自分自身に問いかける。おまえは、生死と直面した極限の場面で親としての威厳、男気を示しきれるか!子どもが誇りを持って語れるような死に様を見せられるかって・・・。
 この映画は07年に公開されていたのだそうだ。ふざけるなって言いたいところだが、ここは大人になって、感謝の意を表したい。2年も遅らせて超大物俳優の作品を封切りさせるなんて、これは間違いなく大英断である。ハンパな情熱では出来ないと思うし、その情熱がなければ、僕はこの作品に触れることが出来なかったのだ。少しでも長く余韻に触れていたいので、午後から観る予定にしていたレスラーは別の機会に譲ることにする。
 MR.Gからコメントを貰って、200kmはハンパな世界じゃないんだってことを改めて思い知らされる。僕が申し込んだことで、自転車乗りにとっての神聖な領域を踏みにじってしまったようで罪悪感すら感じるのだが、もはや後には引けない。何キロまで進めるか分からないが、レースに向けて突き進んで行くしかないのである。
 しかし、恨めしきは回復の遅さ。体の張りが抜けないので今日は思わずマッサージに駆けんでしまったが、練習内容を緩めるつもりは毛頭ないので、僕の持つ超回復力が勝つのか、歳相応にツブされてしまうのか。毎週のエアロビで勝負である。とはいえ土曜にエアロビでのペース走をこなすと日曜日が辛くなる。
 ウーン、どうやればバランスが保てるのか難しいけど、体調ときっちりと相談しながら、目標に向かって突き進んで位行きたい。