FTP値とは何か

 Training and Racing with POWER MATERという本を興味深く読んでいる。パワーメーターを使った科学的トレーニング方法やデータの分析方法が書いてあるのだが、パワー測定器具がなくても心拍数で読み替えることが可能だ。11年トレーニングに活用するために概略をまとめ始めたので、このブログにも少しずつ張り付けていくつもりである。
このブログを覗いてくれるアナタへのささやかなプレゼントであるが、内容を勝手に咀嚼し自分なりの解釈を加えた超訳になっていることはご了承いただきたい。


 では本題に。トレーニング関連書を読んでいるとLT値やAT値あるいはFTP値などTのつく値がたくさん出てきて混乱してしまうが、ここでのTは境界(閾)を意味するThreshold の略で、運動強度が上がり苦痛を感じ始めるポイント(ゾーン)を乳酸値とか有酸素運動域といった切り口でみたのがxxT値である。


LT値(Lactate Threshold)乳酸性作業閾値
 血中乳酸値が上昇し始めるポイント(LT1値)と乳酸値が急激に上昇して体が悲鳴を上げるポイント(LT2値)がある。
LT1付近までは乳酸の発生量と除去量がほぼ等しいが、LT1を超えると乳酸量が増えてきてLT2(血中乳酸濃度が4mmol程度)を境にカーブが急上昇する。


AT値(Anaerobic Threshold)無酸素性作業閾値
 有酸素運動域(酸素>二酸化炭素)から無酸素運動域(酸素<二酸化炭素)に変化していくゾーン



FTP値(Functional Threshold Power)機能的パワー境界値
およびFTHR値(Functional Threshold Heart Rate)機能的心拍境界値
 たぶんこの本の造語で日本語訳をみたことがない。これは運動を効率的に持続可能なパワーないし心拍数のことで具体的には一時間継続可能なパワー(心拍数)を指す。


 この三つの値は当然のことながら深い関係を持っている。軽い強度で運動している時には、取り込む酸素と同じ割合の二酸化炭素を吐き出しているのだが(有酸素運動)、強度が上がり血中に乳酸がたまり始めると、その除去のための代謝が加わるために二酸化炭素の排出量が増えてきて、体内の酸素が不足し無酸素運動領域に入っていく。
 また、筋肉に負担を感じ呼吸が苦しくなると運動パフォーマンスが落ちることは皆よくご存知の通りで、要するに体への負担が増すT値を測定し、この値を引き上げる(あるいはこの領域での耐性を高める)ことで運動力を引き上げていこうというのがT値を使ったトレーニングであり、AT値やLT値を調べるのは難しいのでパワー値(FTP値)を使って管理していこうというのがこの本のコンセプトである。