ブラックスワン

 ナタリーポートマンのための、彼女を飛翔させるべく企画された作品といえるのではないか。そんなスタッフの思いに、彼女は恐らく女優生命をかけるくらいの強い意志をもってこの作品に臨んだのではないか。そして、見事に期待に応えている。
 もう、あの”レオン”の美少女としてはなく、スターウォーズでの表現のふり幅が少ないお姫様としてでもなく、オスカーこそが相応しいこの映画での演技で語り継がれることになるのだろう。
主役を張るために、純真でありながら妖艶である事をも求められるのだが、それは自分自身がまとった殼を突き破る事であり、これまで従順に保って来た母親との関係を崩し、深く押さえ込んで来た性的な欲望を解き放つ事ともなる。その葛藤に、願望や焦躁、強烈なプレッシャーから来る心の歪みや混乱と云ったものが幾重にも重なっていく、複雑で時に歪んだ感情や行動を演じ切ったのだから凄い。少しエグい性的描写や後半のスプラッシュ風の演出には賛否両論あるだろうが、僕は許容する。
また、この作品は男女で感じ方が相当違うと思うが、うちの嫁さんはラストシーンで涙を流しながら心の中で喝采したという。
ただ、この映画は、まだ娘には見せたくないというのも本音である。一緒に行かなくてよかった・・・