皮肉

父を信じて過酷な練習に耐え、長男としての責任感を持って兄弟を引っ張ってきた亀田興毅は本質的に真面目な青年だと思うし、ボクサーとしての技量もかなりなものに見える。ビッグマウスはいただけないが、これはTBSのために話題作りしているのかもしれないし、本当はもっと強い選手と戦いたいのに、マッチメーカーがそれを許してくれないのかもしれない。


先日の防衛戦は、下がりながら相手を呼び込む動きが消極的に見えたことと、KOの予感が全くなかったことから、観る者のフラストレーションがたまる試合になってしまった。そのことは本人が一番分かっているはずで、だからこそ試合後に土下座をして観客に謝ったのだろう。その代わりにといってはなんだが、興毅選手が戦った翌日に、同じ階級のWBC王者山中選手が指名挑戦者のツニャカオとの痺れるような果たし合いに臨み、芸術的な左で僕らの溜飲を下げてくれた。オトコ興毅は必ずや、この恩義にに応えてくれるだろう。


 何かと批判を受けることが多い興毅選手だが、そんな声を全て跳ね返し実力を世の中に示す千載一遇の大チャンスがやって来ている。WBAがスーパー王者モレノとの対戦を指名しているのだから、「最強の証明」を大々的に謳って、モレノ・山中との連戦をぶち上げれば、日本ボクシング界史上最大のイベントになること間違いないし、万が一、負けてしまっても、そのときは和毅をぶつけたらいいじゃないか。祭りは続く。



どうしても4階級制覇がしたいのなら、スーパーバンタムに階級を上げて、今週末の大決戦、ドネアとリゴンドーの勝者と戦えばよい。そこで勝てば世界の歴史に名を残す選手になれる。これ以上階級上げるのはキツいかもしれないが、既に3階級制覇という偉業を達成しているのだから、これからは歴史と記憶に残る試合を組んでほしい。