アカデミー2014

 アカデミー賞の季節になると、日本では封切りされなかった候補作が次々と上映される。これはこれで一つの行事になっていて、候補作をまとめてみてアーでもないコーでもないと夢想するのも悪くない。以前、公開が遅れるのは配給会社の怠慢だと批判したことがあったが、お祭りムードを盛り上げながらの公開はヒットが微妙な映画(特に文芸作品)で確実に数字を残す、いわばモルヒネみたいなもので、もはや止められないのだろう。
 いくら、いい映画発掘してきても、ペイしなければただ慈善事業に過ぎなくなるというのは、芸術にかかわる人が一番辛いはず。


 最近、映画館に足を運ぶ習慣が戻ってきて、アカデミー絡みの作品は4本
アメリカン・ハッスル
ダラス・バイヤーズクラブ
ウルフ・オブ・ウォールストリート
ゼロ・グラビティ


 去年作品賞を取ったアルゴもそうだったけど、最近、嘘みたいな事実を題材にした作品が多い。たとえば、FBIやCIAの頭脳が全ての人間を欺くために作ったシナリオを、予期せぬハプニングが脚色すれば、僕の想像をはるかに超えたストーリーが出来上がるのは当然だと思うけど、ここまで事実ベースの作品が増えると、空想力の限界をみるようで寂しいような気もする。
 ただ、ダラス・バイヤーズ・クラブの主人公の逞しさは、同じ目線で見つめ考え、感動した。作品賞をとった「それでも夜は明ける」観てないので何とも言えないが、ダラスは作品賞に値する名画だと思う。


 今年こそかと毎年話題になるレオ様は、またも受賞出来ず。タランティーノと組んで鮮烈な悪役を演じたジャンゴでもダメ。デパーテッドで組んだ巨匠マーティン・スコセッシの元で、これしかないというはまり役演じたウルフィでもダメとなると、しばらく難しいのかもしれない。僕などは、むしろ、50を過ぎて渋みと枯れた味わいを醸し出すようになってからのレオ様に期待している。

 周りを輝かす演技みせたCベイルの元で、強烈な個性を放ったのがジェニファー・ローレンス。その圧倒的な存在感には驚いた。当時、この事件でおとり捜査の是非が取りざたされたが、今ではこの手の操作って当たり前のように行われているのだろう。恐ろしい話でもある。


 ストーリーに感じるものはなかったけど、ゼログラビティの映像には拍手を。無重力世界に本当に放り出されたような、今までにない、映像感覚を味わうことが出来て面白かった。一人芝居に等しい難しい役柄を演じぬいたサンドラ・ブロックにも拍手を。僕にとっては、感情移入できる俳優じゃないけど、凄いチャレンジだったと思うし、見事に成功させた僕は思う。